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江戸川乱歩傑作選 / 江戸川乱歩

2011年07月30日 23:30

日本における推理小説・恐怖小説のパイオニアである江戸川乱歩の、
デビュー作を含む初期の代表作9編を集めた作品集。

41VW.jpg 1960年12月24日発行

01. 二銭銅貨
02. 二癈人
03. D坂の殺人事件
04. 心理試験← My Favorite
05. 赤い部屋
06. 屋根裏の散歩者
07. 人間椅子← My Favorite
08. 鏡地獄
09. 芋虫← My Favorite

この作品で感じた乱歩の魅力として、切れ味鋭い推理の筋と人間の怖さ汚さをどこまでもリアルに描く点が挙げられる。
二重の暗号を使ったトリックが披露される処女作「二銭銅貨」や天才過ぎな明智小五郎が
冷徹な犯人を、その冷徹さを逆手にとって罠にはめる「心理試験」等、前半の作品では直球の推理が楽しめる。
中盤の「赤い部屋」「屋根裏の散歩者」は推理小説としても読めなくもないが、
それよりも犯人の変態ぶりの描写が凄まじくそっちに関心がいく。犯人の行動は客観的に見ると異常だが、
犯人の心情を含めて話が語られていくので、妙に彼らの行動に納得してしまう。

後半「人間椅子」「鏡地獄」になると推理の部分はなくなり、完全に恐怖小説になっていく。
そして犯人(必ずしも事件を起こす訳ではないがここでは仮にそう呼んでおく)の異常性も前半よりも増していく。
これらの作品は人の狂気すれすれの変態性を描いた作品として興味深く読める。
キーワードも「屋根裏」「椅子」「鏡」と明確で、同じ変態でも色んなタイプが書き分けられている。

そして江戸川乱歩グロテスク趣味の極致と称される(巻末解説より)「芋虫」が最後に控えている。
戦争で四肢と聴覚を失い醜い肉片と化した傷痍軍人の夫と2人暮らしの時子は、
世間的には献身な世話をしている風であったが、陰では彼を蔑み玩具のようにもて遊んでいた。
世間から孤立した2人はどこまでもどこまでも堕ちていく。
ある夜彼女は、彼の瞳があまりに綺麗な事に動揺し衝動的に両目を潰してしまう。
後悔の後に必死に彼の胸に「ユルシテ」と指でなぞる彼女であったが、その晩彼は消え、惨劇が起る。

序盤はコテコテの推理小説で幕を開け、事件を通して犯人の変態性を丹念に描き、後半は人間の異常性が表現される。
傑作選というだけあり作品一つ一つの出来もさることながら、その流れが素晴らしい。
惜しむべきは一つの作品のページ数が30ページ程度と少ない為、特に後半の作品ではもっと読みたいと思ってしまう点だ。

★★★★★★★★★☆


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