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導~みちしるべ~ / 漢

2011年05月30日 22:00

新宿を拠点に活動するMSCの頭である漢の1stソロアルバム。

2005.1.26 Release

01. 陰と陽(INTRO)
02. 漢流の極論
03. ネタ披露
04. 毒立毒歩 feat. DEV LARGE
05. 余韻
06. 巡回 feat. MSC
07. Take candy from a baby
08. 需要と供給 feat. YOUTH
09. 旋風 新宿路団
10. 覆水盆に返らず 新宿路団 feat. VAL
11. スクラッチ狂
12. 紫煙 feat. MAKI the MAGIC
13. 成るべくして成る漢の考え
14. 破壊と再生 feat. RUMI, KEMUI
15. 一所懸命
16. 無法者(OUTRO)

他のジャンルの音楽でも何かを主張する曲というのはたくさんあるけれど、
歌詞に多くの情報を詰め込めるラップとう手法は、何かを批判するのにとても適している。
HIPHOPの中で支配的な価値観として、偽物と本物を見分けろということが良く言われる。
「俺はドープであいつはワックだ」と歌うのはラップの王道だ。
HIPHOPという文化の成り立ちにも因るのだろうが、HIPHOPというのは批判性の高い
もっと言えば攻撃性の強い音楽なのだと思う。良くも悪くも。

基本的に性悪説に基づいて作られることの多いこの音楽、それを好む人の傾向も同じで
HIPHOPリスナーのブログは批判精神満載の所が少なくない。
自分がHIPHOPを好む理由も同じだ。この音楽のそんな性質に惹かれるのだ。

そんな価値観ど真ん中を行くのが漢だ。
「隣家の幼児虐待に興味無い」とまで言ってしまう身も蓋も無い歌詞全てに共感は出来ないけれど
99パーセントのネガティブの中に1パーセントのポジティブを含ませるやさぐれ加減が良い。
今までの日本語ラップの文脈から離れた斬新なフロウでラップの種類を増やしたのも凄いし
言葉の持つ勢いを殺さず巧みに押韻する高度な技術もそうだが
何より、みんなが言いたくても言えなかった偽悪者な歌詞が素晴らしい。
まわりの優秀なトラックメイカーやラッパーのサポートにもより
ILLMATICのジャケットをパロるだけの作品になっています。


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NO PAIN NO GAIN / DJ PMX

2011年05月27日 23:30

FUTURE SHOCKから発表されたDJ PMXのソロ1stシングル。

2002.12.4 Release

01. NO PAIN NO GAIN feat. MACCHO & ZEEBRA
02. LOCO CRUSIN' feat. MACCHO from OZROSAURUS
03. 本物はグッと来るらしい feat. Q from ラッパ我リヤ
04. NO PAIN NO GAIN (Instrumental)

プロデューサー名義のラップ作品は当然ながらラッパーをフィーチャリングすることが大半なのだけれど
その数が1人ならプロデューサーとラッパーの一対一の科学反応を
その数が複数ならその組み合わせの妙を期待する楽しみがある。

本作の表題曲にはFUTURE SHOCKの2大看板ラッパーだったZEEBRAとMACCHOが呼ばれている。
2人は過去に色んな曲で共演しまくっているので、新鮮味は無いが完成度の高いラップを聴かせてくれる。

この時のZEEBRAはキングギドラの2ndアルバムを出した直後で、ダミ声ラップの絶頂期であり
音楽誌で日本語ラップの王道と言われていた頃で、実際フロウに切れがある。
1stソロアルバムの時のような変幻自在なフロウでは無く、小回りは効かないのだが、
シンプルに言葉を聴き手に放り込める強さがある。

この後ZEEBRAは3rdソロアルバム以降、ラップスタイルの模索に入り
4thソロアルバムでまたダミ声にフロウを戻すのだけれど、声に不純物が混じっている感じで
この頃の爽快にすら感じさせる切れ味のある声にはなっていない。
本作の時期のフロウは幅が狭かったので、これを続けていても煮詰まっていただろうからスタイルを
変えていったのは正解だとは思うけれど、楽器としてのダミ声では一番標準が定まっていた。

もう一人の客演のMACCHOは、倍速フロウをものにしハーコーラップを次のレベルに持っていった
2ndアルバム出す直前で、スキルが急上昇していた頃で、ラップの強度(主に声の強さ)はとても高い。

この頃の二人はどのようにラップするかフロウを突き詰め、実際答えを出していた頃だから、
そんな二人が共演した本曲は日本語ラップの一つの回答といっても良いレベルに達している。
この頃の二人は王道のラップを目指す過程でリリックに最大公約数的なHIPHOP価値観を押し出していた頃で、
積極的に聴き手の共感を得たりだとか、日常的な自分といった細やかなパーソナリティーを含ますことには
気が回っていないので、その辺は好き嫌いがはっきりする所ではあろうけれど。

時代遅れと言われるかもしれないが、自分はこの頃のラップが好きだ。
何をラップで伝えるかを突き詰められている今に比べると、歌詞に具体性は希薄だけれど
HIPHOPをレペゼンするのに躊躇が無い姿勢が、そして聴き手にその想いを直送できる技術的な強さが
HIPHOPが好きなのに理由が無い自分のような人間に、真っ直ぐに刺さるのだ。
何ものにも理由を求める人には物足りないのかもしれないが。

PMXには本作のハーコー路線でアルバムまで突っ走って欲しかったが、この後アルバム製作は一旦頓挫し、
結局5年後に発表された1stアルバムは耳辺りの良い曲で固められており、
出ているラッパーのスキルも本作に比べかなり落ちていた。

カップリング曲にラッパ我リヤのQとPMXの貴重なタイマン曲が収録されている。
明日からでもウェッサイラッパーになれそうなQの低音ボイスとPMXのベースラインが同期しまくりで、
PMXのベストアルバムにも収録されているし、隠れ名曲と言えましょう。

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MEGA CITY FIVE / DOBERMAN.INC

2011年05月22日 23:00

DOBERMAN.INCの名前を広めるのに貢献したであろう出世作の2ndアルバム。
驚異の25曲収録2枚組。

2003.4.15 Release

<DISC 1>
01. D.I.EXPERIENCE
02. MEGA CITY FIVE
03. WE DON’T CARE
04. WE GOT IT ALL(FEAT.JAY’ED AND SPYDER)
05. MESSAGE FROM B TOWER
06. F・・K THE MASTER OF SUICIDE FACTORY
07. NO LOVE(WAKE UP!)
08. WELCOME TO B-HEAVEN
09. EVG URBAN FOREST
10. GEE-WHIZ SPOT 24/7
11. COLPO GROSSO(OT’S11)(FEAT.NORISIAM X,4WD,SPYDER AND WOLF PACK)
12. TRAP OF THE G-WEEK
13. 夜にむらがるLADY~OVERNITE CINDERELLA

<DISC 2>
01. STATEMENT D-ST.(JUICY)
02. Y.O.U.
03. STADIUM 51(BASEBALL FAMER FILE001)
04. MS.HARDER(FEAT.NORISIAM X)
05. WE GOT IT ALL Pt.2(FEAT.ASUKA)
06. WHO’S THE JOKER
07. PEE CEE DANCE
08. GAME OVER
09. O-TOWN SWINGA
10. MORE CHOICE
11. うわさ話聞かせろ
12. MEGA SHININ'

幼い頃に聞いた両親の言葉で印象深かったものに、「無駄なものなんて無い」というものがある。
情報やモノに溢れた現代では、本当に必要なものだけを所有せんとするシンプルライフなるものが
説かれたりしている訳で、それとは真逆の考え方なのだが、自分に染み込んでいる考え方でもある。
うちには500枚以上のCDが並んでいるし、他にも本やらDVDやら服に靴etc…と、凄いことになっているのだが
基本捨てられない、否、捨てる位なら初めから買わないのである。
両親は物を大事にしなさいというより、一見無駄に見える努力や役割も実は大切なのだということを
主に言いたかったのだと思うが、拡大解釈させて頂いている。

前置きはこの位にして、本題。
日本語ラップ的にはオリジナルで2枚組のアルバムなんて自分は他に知らないし、
実際殆どないであろう、鬼のボリュームの本作。
バラエティ豊かでスタイリッシュを絵で描いたようなBL中心のトラックと
良い意味でも悪い意味でも喉越しの良い5MCのラップによって25曲を問題なく聴ける。
曲数が多いだけにその方向性も様々で、多くの聴き手が望んでいるであろう
フィクショナルで二枚目な歌詞をBLの超絶おしゃれなトラックにはめ込んでいく行くスタイルの曲もあれば
実験性を重視した曲(BLの鼻声をサンプリングしたM-11何かはその極致)も盛り沢山で、
そのギャップが楽しい。
次の3rdアルバムみたいに、ストレートにカッコ良い曲だけで固めるのも良いけれど、振れ幅のある
表情豊かな曲が猥雑にひしめく本作は、まるで人生や世界を再現しているみたいと言ったら言い過ぎか。
そんな本作は「無駄なものなんて無い」という両親の言葉を思い出させてくれる1枚なのである。多分。

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ROLLIN’045 / OZROSAURUS

2011年05月11日 20:00

今から10年前に発表されたOZROSAURUSの1stアルバム。

2001.4.25 Release

01. INTRO
02. CHECK ME NOW
03. WHOOO
04. KOCO KOCO
05. AREA AREA
06. VILI VILI feat. SHALLA
07. SKIT feat. MASTA SIMON from MIGHTY CROWN
08. ROLLING ROLL UP
09. RULE feat. F.U.T.O / JANBO-MAN from 風林火山
10. 少女A
11. SKIT
12. TELL ME feat. MAY
13. ROLLIN’045
14. 045 BB
15. YOUNG GUNZ feat. M.O.S.A.D. / MAGUMA MC'S
16. しかけ feat. TWIGY
17. 追い越し可

ダウンタウンやナインティナイン、ウッチャンナンチャン等
人気お笑いグループ名に似た言葉が繰り返されているものが多いというのは、有名な話だと思うのだけれど
本作収録の曲名にも「AREA AREA」「VILI VILI」「KOCO KOCO」「ROLLING ROLL UP」等
同じ言葉や似た言葉を繰り返したものが目立つ。
その他の曲も「WHOOO」「RULE」「TELL ME」等、シンプルなタイトルが並ぶ。

それは歌詞にもそのまま当てはまり、同じ言葉を繰り返す手法や
飾らない素朴な言葉で、リリックが組み立てられている。
本作で聴けるMACCHOの歌詞に、難しい表現は一切無いのだけれど
間を埋める為に吐き出される言葉では無く、確かな意思を持って吐き出される言葉が使われている。
その為に、日本語の持つ言葉の力が最大限に引き出されている。

MACCHOは日本で5本の指に入るラッパーだと自分は思っているのだけれど
その理由として、恵まれた声質と、滑舌の良さを生かした倍速ラップといったハード面に加え
この自分の言葉でラップをするというソフト面の強さが挙げられ、それが彼のラップを超一流のものにしている。

また、今では再結成が絶対不可能なYOUNG GANZによるM-15では、フックで
MACCHOは、「045 052 075 Rollin'」
M.O.S.A.D.は、「We don't give a fuck Middle Finger You」
MAGUMA MC'Sは、「MASH回し出す煙巻くマイク」と、
それぞれのグループを即座に思い起こさせるフロウを聴かせてくれる。
このようなフレーズひとつ作るのも大変だと思うが、
本作では、「エリアからエリア」「Check見な」「俺なら耳元だぜ」等、そのようなフレーズが頻発する。
これはMACCHOが本作で言葉の引力を強めることに成功した証拠だろう。

また、本作で大半の曲を手掛けているDJ TOMOの温かみのあるトラックが
MACCHOのハードなラップをまろやかにしてくれ、丁寧に作られたキャッチーなフックも伴い
極太なラップアルバムである本作をとても聴きやすいものにしている。
そのような絶妙なバランスが、次のアルバム以降のMACCHOの飛躍的なラップ技術の上昇にも関わらず
本作をOZROSAURUSの最高傑作にしている。



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