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HEAVEN / SEEDA

2010年11月29日 23:30

「花と雨」で世間からの評価を決定的なものにしたSEEDA。
その後の豪華な客演を多数迎えたメジャーデビューアルバム「街風」の製作は、メジャー特有の制約も多く
フラストレーションの溜まるものだったらしく、それらの不満を払拭する為に
前作から3ヶ月という非常に短いスパンで発表された6枚目のアルバム。

 2008.1.30 Release

01. ヒダマリ
02. 自由の詩 feat. A-Thug
03. Lost Heaven
04. Homeboy Dopeboy
05. Son gotta see tomorrow
06. 空 feat. Luna
07. 紙とペンと音と自分
08. 光
09. I try
10. Nyce Dream
11. Mary Mary
12. Outro
13. Bonustrack

花と雨」の後半部分が好きな人は絶対ツボであろう繊細な作風の本作。
フィーチャリングラッパーは自身のグループSCARS所属のA-THUGひとりのみで、
プロデューサーも馴染みのI-DeAとBACH LOGICの2人にとどめており、
SEEDAのラップを純粋に楽しめる作品だ。
例えるならば醤油にワサビを少し添えて食べる刺身のよう。
良く言えば混じり気が無い、悪く言えば閉じた作風だ。
短い曲が多く、シンプルなビートにSEEDAのラップを乗せ、要所にコーラスを添える、
非常に無駄の無い構成で日本語ラップの作品全体を見回してもここまでタイトなアルバムは珍しい。

歌われている内容はドラッグにまつわる話も少なくないのだがアーティストとして世間の評価を得たという
自信からなのか、「花と雨」のようなガツガツしたハングリーな印象は皆無で
人生や世界の明と暗が、情景描写を絡ませ美しく表現される。
アルバムの中で喜怒哀楽は表現されているが、それらの感情の幅は狭く
ある意味悟ったかのようなニヒルな印象さえ抱かせる。

SEEDAはそんなに韻をガチガチ踏んだり、意識的にパンチラインを作るタイプではない。
それはトラックの音程にはまった美しいフロウであったり、一曲を通して説得力を持たせる歌詞によって
欠点にはなっていない。
いかに韻を踏むか、いかに耳を奪うパンチラインを聴かせるかを競っていた
かつての日本語ラップ創成期のラッパーにとって、彼はまさに宇宙人のような存在なのかもしれない。
そのようなタイプのラッパーとSEEDAは優劣がどうこうというより、
そもそもジャンルが違う存在なのではないだろうか。

このアルバムは構成に無駄が無く、ビートもフロウも歌詞も美しい。
SEEDAのラップを好む人にとっては完璧なアルバムなのかもしれない。
それと同時にライミングやパンチラインを楽しむ向きでもないのも事実だ。
SEEDAは日本語ラップのネクストレベルへ到達した存在なのか。
それは彼に追随するものが今後どれだけ続くかによるだろう。
自分は彼をラップの表現の幅を広げた存在。もしくは新しい表現方法を世間に広めた存在だと思っている。
所謂さんぴん世代を代表とするかつての日本語ラップ。SEEDAを始めとする次世代のラップ。
両者に優劣は本当の所あるのだろうか。
ひとつの方向性としてある意味「完璧な」本作を聴いてそんなことを思った。

mic02.gif

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BREATHE / SEEDA

2010年11月21日 23:30

 2010年8月25日発表作品

01. SET ME FREE
02. FLAT LINE feat. TYC
03. THIS IS HOW WE DO IT
04. TAXI DRIVER
05. ReBARS feat. MoNDoH
06. BIX 90's
07. BREATHE (skit1)
08. MOMENTS
09. 電波電波 feat. D.FOCIS, 4WD
10. LIGHTS feat. lecca
11. skit
12. 道(23区) feat. MC 漢 from MSC
13. 影絵(川崎~太田) feat. bay4k from SCARS
14. alien me
15. 鋭利
16. DREAMIN'
17. WISDOM CRADA REMIX feat. EMI MARIA, ILL BOSSTINO
18. BREATHE (skit 2)
19. LIFE SONG feat. DAVID BANNER



ビーフや引退騒動、ベストアルバム発表を経てのSEEDA8枚目のアルバム。

「GREEN」までの突き詰められたバイリンガルスタイルを捨てた「花と雨」以降、
言葉の響きを大切にしながらも様々なフロウを試してきたSEEDAだが、本作で「花と雨」以降のスタイルを完成させた。
前作「SEEDA」までは実験的な突飛なフロウを曲によっては使用していたが、
本作は攻撃的なビートの上で鋭利に言葉を放り込むにしても、柔和なトラックの上で歌詞を聴き手にフラットに届けるにしても、
「歌詞カードを見なくても言葉を聴き取れること」と「言葉を美しく響かせること」のどちらもを両立させている。
前作までのスタイルから大きくは変わっていないが、良い所が伸ばされ悪い所が取り除かれている。
進化が止まらないBACHLOGICや海外勢のプロデューサーが用意した
バリエーション豊かなフレッシュなビートを抜群の安定感で乗りこなしており、豪華な客演陣の必要性を感じない程だ。
アルバム全編で非常に素晴らしいラップをしているだけに、これ以上改良の余地はあるのだろうかと、次回作以降が心配になってしまう。

麻薬の売人だった過去や姉の死など自身の波乱万丈な人生を切り売りするように綴った「花と雨」以降の作品は、
現在の自分の事を歌ってきた彼だが、本作では「BREATHE」というタイトルからも分かるように日常の生活から感じたことを丁寧に描いている。
彼が多くのリスナーから高く評価されているのは、ラップが単に上手いだけでなく、日常からドラマチックな歌詞を生み出す感性に因るのだろう。
前作「SEEDA」は自分の意見を主張するのを重視し過ぎて聴き辛い所もあったが、表現力が高まった本作では、
様々な比喩を駆使した巧みな表現をしている為に、言葉がナチュラルに頭に入ってきて、例え彼と考えが異なっても不快に思うことは少ない。
むしろ彼の表現力の前で自身の思想が影響を受けそうな位だ。怖い怖い。

SEEDAの躍進はまだまだ続きそうだと思わせてくれた素晴らしい一枚だが、個人的に次回作のハードルは果てしなく上がってしまったなぁ。
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花と雨 / SEEDA

2009年10月04日 23:55



01. ADRENALIN
02. TOKYO
03. ILL'WHEELS feat. BES
04. SKIT
05. 不定職者
06. Sai Bai Men feat. OKI from GEEK
07. WE DON'T CARE feat. GANGSTA TAKA
08. JUST ANOTHER DAY
09. GAME
10. ガキのタワ言 feat. NORIKIYO, STICKY
11. DAYDREAMING
12. LIVE'and LEARN
13. 花と雨



出典は忘れてしまったが、アメリカでのラップ人気の移り変わりに関してこんな話を聞いたことがある。
最初リスナーは声に特徴があるラップを好んで聴いていた。
時が経つと今度はスキルのあるラッパーの作品に人気が集中してきた。
最後に歌詞が素晴らしいラップが評価されるようになった。

人気や評価の基準が声質⇒スキル⇒歌詞となった訳だ。眉唾ものの話だが興味深くはある。

んでこの話を仮に日本語ラップに当てはめると今はどこなのだろう。
個人的にはスキルと歌詞の間ぐらいにいるんじゃないかなぁと思っている。
んでスキルから歌詞へ評価の基準が動いたきっかけの一つが本作「花と雨」だとも思っている。

前作「GREEN」までのSEEDAは歌詞に英語と日本語をごちゃ混ぜにし、言葉を詰め込んだラップをしていた。
発声法も聴き取りにくいもので、すごくラップが上手いのは分かるけど、
何言っているのか歌詞カードを見ないとよく分からなかった。

だが本作からSEEDAは思い切ったスタイルチェンジをし、英語を使うことがあっても一部に留め、
日本語を中心とした歌詞を書くようになった。
また詰め込み系のラップも止め、何より発声が非常に聴き取りやすくなった。

その結果従来の日本語ラップに近づいたというとそうでもなかった。
歌詞は日本語でかつ聴き取りやすいが、その響きはトラックに自然に溶け込み
今までの日本語ラップにありがちだった無理やり感がまるで無い。
スタイルチェンジ後のフロウはスムーズかつオリジナルなもので日本語ラップのレベルを一気に引き上げた印象だ。

そんな抜群のハード(スキル)を駆使して表現されたソフト(歌詞)は白い薬や裁判の話やらで穏やかではないが、
表現力が抜群なのでつい引き込まれてしまう。特に前半のハイライトとなるM-2は
「尊敬できるヤクザに会えば ワルと堅気の違い わかるはずだ 尊敬できるラッパーがいれば 自ずとHIP HOPがわかるはずだ」
「おしゃれでかっこいいヤツはレイプ魔 人当たりいいアイツは注射マン」等パンチライン連発。

M-10まで自分達の凄さや社会に対する不満を粋な語り口で聴かせていたところから一転、
M-11から流れが切り替わる。自らの生い立ちや姉の死、彼が今ここにいること、彼が彼である理由を歌う。
以降の流れがこの作品及びSEEDAの評価を決定的にしたのは想像に難く無い。

この作品で評価を確実なものとしたSEEDAは以降、豪華客演を迎えたメジャー盤「街風」、
本作の終盤をクローズアップし本作をよりパーソナルな作風にした「HEAVEN」、
より高い視点でのメッセージを発しつつも人懐こさが過去最高となった「SEEDA」等を発表しているが、
本作に充満するハングリーさにはどれも及ばない。

NASが「ILLMATIC」のノリが以後出せないのと同じで、評価された後の作品だから当たり前なのかもしれない。
それを求めるなら過去の作品に遡るか、他のアーティストの作品をあたるしか無い訳だ。


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